鮭の役割(環境のはなし)

先週の土曜日、カナダの有名な環境学者David Suzuki(日系カナディアン)の講演+ナショナルジオグラフィックの映画「ブリティッシュコロンビア(BC)の森に暮らす熊とオオカミ」のイベントに行ってきた。イベントの冒頭では、BCで材木用の木を伐採するときに山(伐採地の森)にある木を一本残らず切り倒してしまうクリアカットという方法が今でも続けられ環境破壊の元凶になっていると、丸裸になった伐採地の写真がスクリーンに映し出された。BCの環境問題の話題では必ずと言っていいほどこの話が持ち上がる。私は今回のイベントに参加して、この問題の深刻さをはじめて知ることになった。

北アメリカの大西洋沿岸北部には、豊かなRain Forest(暖帯多雨林)が広がっている。そこに流れるたくさんの川には、毎年秋になると大量の鮭が生まれ故郷の川に戻ってくることで有名である。しかし、クリアカットによる山の破壊、それによる川の破壊によって、川に戻ってくる鮭の数がどんどん減っているという。映画では、この鮭の役割の重要性を、熊とオオカミの生態を通してわかりやすく描いていた。秋に川にやってくる鮭はRain Forestに生息する熊とオオカミの貴重なタンパク質源となっているだけでなく、熊やオオカミが食べ残した鮭は鳥や他の小動物たちの餌となり、熊をはじめとする動物たちが森のあちこちに落としていく糞は、森の栄養素-特に植物の成長を促進する物質(nitrogen)-となっているのだった。BCのRain Forestは樹齢何百年もの巨木で有名だが、その成長を助けていたのは実は鮭だったことが、最近の遺伝子レベルの調査で分かってきたそうだ。つまり、鮭が川に戻ってこなくなったら、動物や鳥たちの生態が変わるだけでなく、森の土質も変わり、森の木々の存続も危うくなるのである。偶然にも、このイベントの翌日の新聞に、バンクーバーアイランド周辺のシャチ(orca/killer whales)の数が危機的に減ったのは鮭の数が減ったせいであるという記事が載っていた。鮭の役割は、森全体の環境サイクルの大切な一部だったことを学んで、環境についてもっと考えてみたくなった。

森の伐採という人間の活動によって、これだけ多くの動物・植物の生態系が破壊されてしまうことは大変な驚きだった。なぜクリアカットの手法をもっと環境にやさしい方法に変えられないのかと疑問に思ったが、これは様々な商業的・政治的な問題が絡み、すぐに変えさせることは難しいという。Suzuki氏は、お金と自然のリソースを比べたとき、お金は自然の何十倍も早く増やすことができる、だから、本当は自然(人間を支えているもの)があってこそ成り立つ経済なのに、目先の利益にとらわれる人間は環境問題よりも経済問題を優先してしてしまうのだと話していた。Suzuki氏はカナダでは環境問題の第一人者であり、自然愛好家・環境保護者からは絶大な支持を集めている。余談だが、講演会の前にダウンタウンで面白いものを見つけたので、写真を添えておきたい。

b0000372_196088.jpg


もっと詳しく知りたい人はこちらへ
- http://www.canadianrainforests.org/
- http://www.davidsuzuki.org/
[PR]
Commented by umizumi at 2005-05-06 05:55
はじめまして。サーモンが実際にRain Forestの成長を支えているというのは知りませんでした。私は海洋学をベースに環境問題を勉強しているので、とても興味深い話です。仮にサーモンが壊滅した場合に周辺環境にどのようなインパクトがあるのか、気になります。ちょっと時間のある時にでも専門家の論文を検索してみようと思います。また遊びに来ますね。Suzuki氏の似顔絵、かわいいですね。(笑)
Commented by miffyinvic at 2005-05-08 17:33
海洋学おもしろそうですね。私の専攻は全然違う分野なので詳しいことはわかりませんが、講演で、もう地球環境を元に戻すことはできないレベルに環境破壊が進んでしまったと聞きました。地球温暖化を遅らせることは可能かもしれないけれど、温暖化を止めることはできないところまで来てしまったようです。。できるだけ環境にやさしい生活を心がけたいですね。
by miffyinvic | 2005-05-05 19:46 | カルチャー | Comments(2)

カナダ西海岸で5歳児と二人暮らし。


by miffyinvic
プロフィールを見る