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映画:Darwin's Nightmare

不思議なほど、自分の興味を持ったことに関係する情報は目の前に転がり込んでくるものだ。もちろん、本人がそのトピックにアンテナを張っているせいもあるけれど、偶然にしてはタイミングが良すぎると思うこともある。今日は夜、めずらしく家でテレビでオンエアされている映画を見た。タイトルは「Darwin's Nightmare」(2004)。ドキュメンタリー映画で、タンザニアのビクトリア湖に導入されたNile Perch(スズキの一種)が、現地の環境と経済の破壊にいかにつながってきたか、現地の様々な立場の人たちの視点を通して語りかける。アフリカの問題について勉強し始めた矢先に出会ったこの映画は衝撃的だった。

1960年代に、たった一人の男がバケツ一杯の外来種のPerch(パーチ)を放流したために、ビクトリア湖にかつていた多様な魚は今や絶滅し、生き残ったパーチだけが現地では貴重な輸出品目として1日に500トンも加工されヨーロッパや日本に輸出されているという。輸出業者や空輸に携わる一部の者たち、きれいな加工済みの冷凍パーチを安々と手に入れる先進国の人々は潤う一方で、ワニに襲われる危険を冒してその魚を採る現地人、その家族、漁業に参加できない人々は、1日1ドル以下の生活で生死の境目にいる。空輸のための飛行機は、ヨーロッパ、中東、アジア等の国からアフリカへの武器輸出には利用されるが、現地の人が切望する食料品・衣類などの輸送に使われることはない。輸出用のパーチを加工するときに余った骨に残っている魚肉が現地の人の食糧となるのだが、それらは考えられないほど非衛生的な環境でさらに加工され、現地のマーケットで売られていく。非衛生的な環境に加えて、強烈なアンモニアや加工時の煙により、そこに生活する人たちは病気や障害に苦しむ。現地で採れる食糧は輸出に回されて、その土地で生きる人たちには何も食べるものがなく、小さな鍋1つのお米を十何人もの子どもたちが殴りながら奪い合い、エイズで親を亡くしたストリートチルドレン達は、恐怖を感じずに一瞬にして眠れる非常に有毒なドラッグを、魚をパックするビニールから抽出して吸入する。

次々と映し出される映像とコメントは、強烈なメッセージを訴えかけてきた。映画に出てくる冷凍パーチのビジネスに携わる人々に怒りを感じたが、日本やカナダで安い加工食品や(食料品以外の)激安商品を買うとき、間接的に(しかも気づかないうちに)、私たちもそういうビジネスに加担し、貧困の環境に生きる人たちを搾取している場合がある。貧しい国側の視点から見れば、先進国の消費者も貧欲なビジネスマンと同罪なのかもしれない。世界の人口の1/3は肥満に苦しみ(主に北アメリカ)、他の1/3(アフリカ・アジアの一部)は飢餓に苦しむ。この皮肉な状況を私たちはいつ解決できるのだろうか?

NY Times Movie Review
※この映画、日本では「ダーウィンの悪夢」という邦題で今年の夏公開予定のようです。
by miffyinvic | 2006-01-21 19:34

カナダ西海岸で7歳児と二人暮らし


by miffyinvic